SPECIAL
監督・前田洋志オフィシャルインタビュー(後編)
ド派手な技、残酷な表現にも臆せずチャレンジすることが重要だった
不朽の名作である『北斗の拳』が、新たな映像表現により『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』(以下、『北斗の拳』)として、令和の時代に蘇った。
さまざまな媒体を通して受け継がれてきた『北斗の拳』の魅力を、本作はどのようなアプローチで表現しようとしたのか。第1クールが幕を下ろした今、前田洋志監督に直撃した。
後編では、血しぶきのような残酷な表現、ケンシロウとレイの対比、そして第2クールの見どころについてうかがった。
さまざまな媒体を通して受け継がれてきた『北斗の拳』の魅力を、本作はどのようなアプローチで表現しようとしたのか。第1クールが幕を下ろした今、前田洋志監督に直撃した。
後編では、血しぶきのような残酷な表現、ケンシロウとレイの対比、そして第2クールの見どころについてうかがった。
血しぶきや身体が破裂する表現についてもうかがえればと思います。こうした表現におけるエフェクトや撮影に関して、何かルールや演出方針はありましたか?
僕がもともと撮影上がりということもあり、撮影監督の髙橋(佑樹)さんとは普通の作品ではあまりないくらい密にやり取りさせていただいています。夜中に突然電話をかけて、「すみません、この件なんですけど」と相談するようなことがあるくらいです(笑)。ただ、ルールというものは特に設けていなくて。強いて言えば、派手なところはド派手に、しっとりするところはしっとりと、その緩急の差をきちんとつけていこうというくらいです。
たとえば遊技機やゲームでは、必殺技はどうしてもド派手なものになります。それをアニメーションで再現しようとすると、色的にうるさいよね、やりすぎだよねとなることが多いんです。ただ、本作ではあえて制限をつけず、できるだけ派手に、できる限りカッコよくやってもらっています。
レイで言えば、レイのエフェクトは僕が率先して作って、「こうしたいです」と提案していたくらいです。もしかすると「余計なことをするな」と思われたかもしれませんし、コントロールしづらいエフェクトを渡して怒られることもありました(笑)。もちろん、レイの技そのものに思い入れがあるというのもありますが。とはいえ『北斗の拳』の魅力は、ド派手な技や、激しさ、残酷な表現にあるので、そこは臆せず挑戦することがポイントでした。
たとえば遊技機やゲームでは、必殺技はどうしてもド派手なものになります。それをアニメーションで再現しようとすると、色的にうるさいよね、やりすぎだよねとなることが多いんです。ただ、本作ではあえて制限をつけず、できるだけ派手に、できる限りカッコよくやってもらっています。
レイで言えば、レイのエフェクトは僕が率先して作って、「こうしたいです」と提案していたくらいです。もしかすると「余計なことをするな」と思われたかもしれませんし、コントロールしづらいエフェクトを渡して怒られることもありました(笑)。もちろん、レイの技そのものに思い入れがあるというのもありますが。とはいえ『北斗の拳』の魅力は、ド派手な技や、激しさ、残酷な表現にあるので、そこは臆せず挑戦することがポイントでした。
監督はもともと撮影出身とのことですが、撮影に関しては盛るときはかなり盛るタイプなんですか?
そうですね。僕はもともと、くどいタイプの撮影をする人間です。監督さんに「やりすぎだよ」と怒られながらやることもありました。それもあって、自分の監督作品では好きなようにやらせていただいています(笑)。
(笑)。ところで、血しぶきや身体が割れる表現など、センシティブと言われそうな表現もありますよね。最初から原作通りにやっていくという方針だったのでしょうか?
その通りです。市場としては海外市場も大きいですし、海外ではグロければグロいほどいいという空気も多少ありますから。とはいえ海外を見据えつつも、やはり国内のコンプライアンスにも気を配らないといけません。ただ、ゴア表現に関してはいっさい制限をせず、全力で作るという方向で進めました。今は撮影や編集の技術も非常に発達していますので、規制については作った後に考えればいい、と。
残酷表現は『北斗の拳』の大きな魅力のひとつです。それをわざわざ萎縮して小さくしてしまう必要はないですし、逆に最大限出していこうと考えて作っています。
残酷表現は『北斗の拳』の大きな魅力のひとつです。それをわざわざ萎縮して小さくしてしまう必要はないですし、逆に最大限出していこうと考えて作っています。

では、直近の物語についてもうかがえればと思います。第11話からレイが本格的に登場しました。ケンシロウの北斗神拳との違いなど、特に際立たせたかったことはありますか?
レイは人気のあるキャラクターですし、技も非常に派手です。僕自身もレイが大好きなので、人一倍気合いが入っていました。流派の違いという意味では、ケンシロウの北斗神拳は、南斗とはまた別の流派です。僕の中では、北斗神拳は地面にどっしりと根を張り、しっかり立って揺るがない拳法だと考えています。
一方で、南斗は華のある系統です。現実の世界で言うところの少林寺拳法のような、飛んだり跳ねたりする派手な技を意識しました。また、南斗水鳥拳や南斗孤鷲拳など、技の名前にも鳥が入っていますので、やはり空中戦を積極的に取り入れています。特にレイは飛びまくります。必要がなくても、かなり飛んで戦います。手を広げるポーズなども特徴なので、原作よりも多く飛んでいるくらいです(笑)。地面を制する北斗神拳と、空を駆け巡る南斗水鳥拳。この差を明確につけました。
一方で、南斗は華のある系統です。現実の世界で言うところの少林寺拳法のような、飛んだり跳ねたりする派手な技を意識しました。また、南斗水鳥拳や南斗孤鷲拳など、技の名前にも鳥が入っていますので、やはり空中戦を積極的に取り入れています。特にレイは飛びまくります。必要がなくても、かなり飛んで戦います。手を広げるポーズなども特徴なので、原作よりも多く飛んでいるくらいです(笑)。地面を制する北斗神拳と、空を駆け巡る南斗水鳥拳。この差を明確につけました。
レイには色気もあると思います。ポーズやシルエットで大切にしたことはありますか?
アニメーションは、1秒間に24コマ、もしくは30コマで作られていますが、レイはどこで止めてもカッコよくなるように、レイはすべてのコマでカッコよく見せることを目指しました。あとは、動きの滑らかさや優雅さ、華麗さも大事にして、武道だけではなく、舞踊のように見えることも意識しています。

第12話では、ケンシロウとレイの共闘など、見応えのあるシーンがありました。見せ方で大事にしたこと、意識されたことをうかがえますか。
ケンシロウとレイは、最初は敵対する立場で出会います。そこからお互いを認め合うタイミングを、それぞれしっかり入れています。具体的にどこかは探していただければと思うのですが、あるタイミングで、レイはケンシロウのことを完全に信用します。また、それとは別のタイミングで、ケンシロウもまたレイのことを味方だと認める瞬間を映像の中に仕込んでいます。
それを境に、ふたりの態度ががらりと変わるんです。それまで警戒していた相手を信頼し、背中を預ける。そういう心の動きを映像の中で表現していますので、ぜひ見つけて楽しんでいただければと思います。
それを境に、ふたりの態度ががらりと変わるんです。それまで警戒していた相手を信頼し、背中を預ける。そういう心の動きを映像の中で表現していますので、ぜひ見つけて楽しんでいただければと思います。

第1クールのラストとなる第14話では、ケンシロウとレイの戦闘もありました。
このあたりは、心の葛藤が非常にわかりやすく出るところです。原作どおりに作っていくことは当然として、このアニメではそれ以上に感情を乗せることを意識しました。
映像の流れで言うと、最初にレイが「キサマが死ぬしかない」と言って、ケンシロウに向かっていきます。ただ、ケンシロウはいっさい手を出しません。かわしたり、いなしたりするだけです。そしてある地点で、これはもう戦うしかないとなった段階で、初めてケンシロウが手を出します。
ケンシロウに手を出さざるを得ない状況まで追い詰めるレイもすごいと思いますし、その攻撃をかわすために撃ってしまうようなアクションもひとつあります。ただ、それ以外の部分では、ケンシロウがずっと受け身です。彼を受け身にし続けることで、ケンシロウが持つレイへの感情の深さを知ることができますし、その気持ちをわかったうえで攻撃せざるを得ない状況に追い詰められているレイの葛藤も伝わると思います。
そこはアクションだけではなく、表情や、演者さんの声も含めて、うまく組み立てていけたと思っていますので、あらためて見ていただけると嬉しいです。
映像の流れで言うと、最初にレイが「キサマが死ぬしかない」と言って、ケンシロウに向かっていきます。ただ、ケンシロウはいっさい手を出しません。かわしたり、いなしたりするだけです。そしてある地点で、これはもう戦うしかないとなった段階で、初めてケンシロウが手を出します。
ケンシロウに手を出さざるを得ない状況まで追い詰めるレイもすごいと思いますし、その攻撃をかわすために撃ってしまうようなアクションもひとつあります。ただ、それ以外の部分では、ケンシロウがずっと受け身です。彼を受け身にし続けることで、ケンシロウが持つレイへの感情の深さを知ることができますし、その気持ちをわかったうえで攻撃せざるを得ない状況に追い詰められているレイの葛藤も伝わると思います。
そこはアクションだけではなく、表情や、演者さんの声も含めて、うまく組み立てていけたと思っていますので、あらためて見ていただけると嬉しいです。

アイリやマミヤもそうですが、声優さんの芝居も含めて悲劇性が増していた印象がありました。
ありがとうございます。あまりかわいそうにしすぎると、本当にかわいそうになってしまうのですが(笑)、一度落とすところは落として、そのぶん駆け上がる気持ちよさを作る必要があるんです。アイリには申し訳ないのですが、少しかわいそうな目にあってもらったという感じですね。
では、第2クールを楽しみにしている方へ期待してほしいことを教えてください。
このままの流れとペース感でいくと、ディープなファンの方々は、おそらくこのあたりまで行くだろうなと想像できると思います(笑)。ええ、いよいよ北斗四兄弟が揃い踏みします。それぞれが深い思いを抱え、それぞれの思うところに向かって歩いていく。その中で交差する運命がここから描写されていくので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
キャスト解禁コメントでお聞きしている質問にもお答えいただけますか。
- 『北斗の拳』の中でお気に入りのセリフを教えてください。
第1話、バットの「今の世の中、ガキなんざなんの役にもたたねぇ。まっ、いっちまえば生まれてこなかったほうがよかったんだ」というセリフです。派手なセリフでもなければ、強く印象に残るようなセリフでもないと思います。僕も子どもの頃読んでいたときは流して読んでいたのですが、大人になって読み返してあることに気づいたんです。
バットはこのセリフの後、自分が育った村に戻るのですが、そこでバットが村を出た理由が語られます。自分はご飯をたくさん食べてしまう。ほかの子どもたちがちゃんと食べるには、自分が村を出なければならない、と。
そのエピソードを読んだとき、第1話のあの言葉は、バットの自分自身に対してのセリフなんだと気づいたんです。バットは大人になっても、常に自分を差し置いて他者を気遣っています、この自己犠牲の精神こそが『北斗の拳』の中に語られずとも息づいているものだと知って、この作品の面白さを再認識しました。 - 好きなキャラクターを教えてください。
圧倒的にレイです。子どもの頃からレイですね。指で引っかいたら切れるという、この一点だけで大好きになりました。人としてはどうなんだと思うところもありますが、その危うさもまたよいということで、レイです。 - 『北斗の拳』との出会いを教えてください。
これは忘れもしないのですが、小学校低学年の頃ですね。歯医者にひとりで行ったんです。治療室の中では子どもが泣き叫んでいて、歯を削る音がしていて、もうビクビクの状態でした(笑)。そんなときに、待合室に置いてあった『ジャンプ』を読んだら、そこに『北斗の拳』が載っていたんです。
血しぶきが飛び散り、とんでもないことが行われていて、もう怖くて怖くてたまらなくて。それでも面白くて読んでしまったんです。何話だったかははっきり覚えていません。その後、恐怖の治療に行くことになり、若干のトラウマになり……という、なかなかマイナスな出会いではあります(笑)。 - 『北斗の拳』の舞台になっている世紀末の世を生き抜くために必要なことは何だと思いますか?
少し考えたのですが、ハムかなと思っています(笑)。劇中でリンが希望が大事だと言っていますよね。希望を忘れず現実に立ち向かうためには気力も体力も充実していなければならない。だったら、しっかり食べて、しっかり休まなければいけない。そう考えた結果、ハムだという結論にたどり着きました(笑)。




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