SPECIAL
音響監督・小沼則義オフィシャルインタビュー(後編)
敵役のキャラクターたちこそが視聴者の感情を動かす役割を担っている
『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』(以下、『北斗の拳』)第1クールが、ついに幕を閉じた。
原作に忠実でありながら、令和のテレビアニメーションとして新たに動き出した本作。その迫力を支えたものに、リスペクトに満ちた音響効果と音楽、そしてシリアスと過剰さが同居する声優陣の芝居がある。
どのような音響設計で、令和の『北斗の拳』をデザインしようとしたのか。音響監督の小沼則義さんに、後編では「断末魔」や「ザコキャラクター」、「ボスキャラクター」などへのディレクションについてうかがった。
原作に忠実でありながら、令和のテレビアニメーションとして新たに動き出した本作。その迫力を支えたものに、リスペクトに満ちた音響効果と音楽、そしてシリアスと過剰さが同居する声優陣の芝居がある。
どのような音響設計で、令和の『北斗の拳』をデザインしようとしたのか。音響監督の小沼則義さんに、後編では「断末魔」や「ザコキャラクター」、「ボスキャラクター」などへのディレクションについてうかがった。
武内さん以外のメインキャラクターで、オーディションの時点から「これはこの人しかない」と感じたキャストさんはいますか?
皆さん素晴らしかったという前提ですが、ラオウ(楠 大典さん)に関してはオーディション対象のキャラクターだったので、最後までどうするかとかなりディスカッションを重ねました。その中で、比較的すっと決まったのはシン役の遊佐浩二さんです。このキャラクターには今回、このアプローチがいいね、という感じで決まりました。あとは、それぞれの悪役の皆さんも最高でしたね。

『北斗の拳』といえば、やはり敵キャラクターの断末魔も大きな魅力です。今回のシリーズでは、断末魔をどのような見せ場として考えていましたか。
昭和版のザコといえば、やはり千葉繁さんですよね。正統派「ヒャッハー」を作った方ですし、『北斗の拳』のナレーションといえば千葉さんのイメージだという方も多いと思います。我々としては、それをそのままやる選択肢もなかったわけではありません。ですが、それが令和の選択肢として意味があるのかと考えると、やはり違うだろうとなりました。
では、千葉さんではないけれど千葉さんっぽい方にナレーションをしてもらうのかというと、それも違う。正統的なナレーションでありながら、我々の作品に対する意志も込めるとなると、アニメ『蒼天の拳REGENESIS』で霞拳志郎を演じていた山寺宏一さんだろうということで、ナレーションは決まりました。
ザコに関しては、やはりあの世界では「ヒャッハー」は言わなければいけません。どうしたってヒャッハーするわけです(笑)。皆さんも最初に「いつヒャッハーって言うんだ?」と期待しているはずですし、『北斗の拳』のアフレコにザコとして呼ばれたら、演者さんも絶対に言いたいはずですから。それで、「ヒャッハー」を禁止するのはやめようと考えました。
では、千葉さんではないけれど千葉さんっぽい方にナレーションをしてもらうのかというと、それも違う。正統的なナレーションでありながら、我々の作品に対する意志も込めるとなると、アニメ『蒼天の拳REGENESIS』で霞拳志郎を演じていた山寺宏一さんだろうということで、ナレーションは決まりました。
ザコに関しては、やはりあの世界では「ヒャッハー」は言わなければいけません。どうしたってヒャッハーするわけです(笑)。皆さんも最初に「いつヒャッハーって言うんだ?」と期待しているはずですし、『北斗の拳』のアフレコにザコとして呼ばれたら、演者さんも絶対に言いたいはずですから。それで、「ヒャッハー」を禁止するのはやめようと考えました。
ザコは、福島潤さんと間宮康弘さんが中心になって演じられていました。
ザコだからといって、そこらへんの若い新人に任せればいいというものではないんです。他作品であれば、いわゆるモブ役……名無しの「学生A」で「○○君、おはよう」と言うだけなら若手や新人の子にチャンスをあげることもあります。ですが、この作品のザコに関してはそれではいけないだろう、と。力のある人を呼びましょう、ということになったんです。
しかも、千葉さんの後を受け継ぐことに対して、覚悟を持ってやってくださる人でないと難しい。そう考えたとき、別の作品でご一緒したことのある福島さんと間宮さんが思い浮かんだんです。福島さんはアニメで、間宮さんは外画吹き替えでご一緒していました。それぞれ、細くて危なそうな人は福島さん、太くて脳筋っぽい人は間宮さんというバランスですね。それがよいのではないかと考え、お願いしました。
しかも、千葉さんの後を受け継ぐことに対して、覚悟を持ってやってくださる人でないと難しい。そう考えたとき、別の作品でご一緒したことのある福島さんと間宮さんが思い浮かんだんです。福島さんはアニメで、間宮さんは外画吹き替えでご一緒していました。それぞれ、細くて危なそうな人は福島さん、太くて脳筋っぽい人は間宮さんというバランスですね。それがよいのではないかと考え、お願いしました。


おふたりともベテランの域に差し掛かるキャリアの方です。
ええ。ですので、「正直、クレジットで大きく名前が出るようなキャラクターたちではないし、あなたのキャリアを考えると割に合わないかもしれない。でも、信用できる人にしかお願いできない。やってくれないか」と、お願いしました。
頼れるザコ、という感じですね(笑)。
そうですね。だいたい毎回のアフレコにおふたりがいて、おふたりが中心になっていました。「俺は今日、こう死のうと思うけど、お前どうする?」というような会話を、ザコ同士で毎回しているんです(笑)。木内太郎さんが演じられた「Oh No!」ザコも、テスト(リハーサル)と本番で違ってもいいですし、怒らないから一回好きにやっていいよと言っていました。ダメなときはダメと言うから、と。
原哲夫先生やコアミックスの方々とお話ししたときに、『北斗の拳』には『マッドマックス』のような世紀末的なノリもあるけれど、実は赤塚不二夫先生のような、不条理劇のようなところもあるのだとうかがいました。いかにそのテイストを出すかは、本当に勇気が必要なんですよ。ハードボイルドな男たちの愛と友情の物語の中で、いきなり斧で首を切られた人が「Oh No!」と言うわけですから、こちらとしては怖いんです。それでも、みんなで勇気を持って一致団結してできたのは、ハート様のおかげだったと思っています。
原哲夫先生やコアミックスの方々とお話ししたときに、『北斗の拳』には『マッドマックス』のような世紀末的なノリもあるけれど、実は赤塚不二夫先生のような、不条理劇のようなところもあるのだとうかがいました。いかにそのテイストを出すかは、本当に勇気が必要なんですよ。ハードボイルドな男たちの愛と友情の物語の中で、いきなり斧で首を切られた人が「Oh No!」と言うわけですから、こちらとしては怖いんです。それでも、みんなで勇気を持って一致団結してできたのは、ハート様のおかげだったと思っています。

ハート様ですか!
茶風林さんのお芝居ですね。ギャグとシリアスの絶妙なバランスが本当によくて、面白いのに迫力もあるんです。それを聞いたとき、現場全体の顔つきが変わった気がします。第3話あたりまでは、みんな少し探り探りだったんです。「新しい『北斗の拳』ってどうすればいいの?」という空気もありましたし、我々も考えすぎているところがあって……。そこに茶風林さんが、よくわからないことを言いつつも、面白い芝居として成立させるんです。面白いけれど、かっこいい。それを見たことで、みんなの中で少しずつ、いい意味でネジが外れていったのかなと思います。
「Oh No!」は確か第2話だったと思いますが、あれは第2話の段階でやるにはかなりのチャレンジでした。テストが終わった後に、木内さんが「小沼さん」と、今まさに死にますというような顔で呼びかけてきて「やっちゃっていいですか?」と(笑)。でも、いつでもチャレンジしてほしいと。そういうところも含めて、茶風林さんの芝居をきっかけに、ザコのみんなが前向きに取り組んでくれました。
「Oh No!」は確か第2話だったと思いますが、あれは第2話の段階でやるにはかなりのチャレンジでした。テストが終わった後に、木内さんが「小沼さん」と、今まさに死にますというような顔で呼びかけてきて「やっちゃっていいですか?」と(笑)。でも、いつでもチャレンジしてほしいと。そういうところも含めて、茶風林さんの芝居をきっかけに、ザコのみんなが前向きに取り組んでくれました。

「たわば」「ひでぶ」「あべし」のようなお決まりの断末魔もあります。そこは、はっきり言ってくださいという指定があったのでしょうか?
それに関しては、「ひでぶ」なら「ひでぶ」ですと説明しました。ほかのセリフはある程度自由にやっていただいても、決めの部分だけは変えずに、ちゃんと「ひでぶ」と言ってくださいと。そのうえで、ほかのところに関しては、新しい「ひでぶ」や「あべし」を作るつもりで頑張ってください、と伝えています。
「あべし」は逆に伝統芸能なので、リスペクトを込めて山崎たくみさんをお呼びし、「あべし」と言って帰ってもらいました。山崎さんは「汚物は消毒だ」の役など、遊技機で長らくザコをやっていらっしゃる方です。そういう意味では、我々は山崎さんに一度は挨拶しないといけませんから(笑)。スケジュールがなかなか合わなかったのですが、本当にそれだけを言うために来ていただいて、それだけ言って帰られました。それでも非常に喜んでいただけましたし、こちらとしてもありがたかったです。
「あべし」は逆に伝統芸能なので、リスペクトを込めて山崎たくみさんをお呼びし、「あべし」と言って帰ってもらいました。山崎さんは「汚物は消毒だ」の役など、遊技機で長らくザコをやっていらっしゃる方です。そういう意味では、我々は山崎さんに一度は挨拶しないといけませんから(笑)。スケジュールがなかなか合わなかったのですが、本当にそれだけを言うために来ていただいて、それだけ言って帰られました。それでも非常に喜んでいただけましたし、こちらとしてもありがたかったです。
こちらのインタビュー直前では、ジャッカルが退場しました。彼を演じた松山鷹志さんの命乞いや断末魔がすさまじかったです。
失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、令和版の『北斗の拳』でジャッカル役というと、普通に考えたら大ベテランの松山さんは第一候補にはならないかもしれません。
ただ、今回の『北斗の拳』は、かなり硬派なキャスティングをしているんです。本当に合うと思う人を呼びましょうという方針でした。もちろん、ここに呼ばれていない方が悪いということではありません。ただ、本当の悪人、本当にクズでゲスな表現ができる人。その上で、自分の声をよく聞かせようという意識が1ミリもなく、ただジャッカルという存在を表現できる人。そう考えたときに浮かんだのが、松山さんでした。
ただ、今回の『北斗の拳』は、かなり硬派なキャスティングをしているんです。本当に合うと思う人を呼びましょうという方針でした。もちろん、ここに呼ばれていない方が悪いということではありません。ただ、本当の悪人、本当にクズでゲスな表現ができる人。その上で、自分の声をよく聞かせようという意識が1ミリもなく、ただジャッカルという存在を表現できる人。そう考えたときに浮かんだのが、松山さんでした。
完全にジャッカル役でお願いしたのでしょうか?
いえ、松山さんには、ほかの役でもオーディションを受けていただいていたのですが、この声からくる感じは、もうジャッカルだよね、と。実際にやっていただくと、本当にゲスで、本当に「クズ・オブ・クズ」でした(笑)。最後の命乞いのところも見事でしたし、あのランクのベテランの方が大汗をかきながら熱演されているんです。それは周りの役者さんにも非常によい影響を与えたと思います。
ケンシロウはあまりしゃべらないキャラクターなので、どちらかというと、敵役のキャラクターが視聴者の感情を動かす役割を担っていると思っています。その意味では、ほかの敵役の方々も皆さん素晴らしかったですね。
ケンシロウはあまりしゃべらないキャラクターなので、どちらかというと、敵役のキャラクターが視聴者の感情を動かす役割を担っていると思っています。その意味では、ほかの敵役の方々も皆さん素晴らしかったですね。

次はどなたがやるのだろうと、敵役のキャスティングも楽しみでした。
そうですね。星野貴紀さん(カーネル役)もきちんとしていてよかったですし、斉藤次郎さん(マッドサージ役)も、少し脳筋でバカな感じが非常によく出ていました。一条和矢さんも、牙親父として泣くところなどが非常に素晴らしかったです。口ではそう言っているけれど、本当はまったくそんなことを思っていないだろうというバランスなんです。口だけの感じも、一条さんは素晴らしかったです。
そういう意味では、敵役の方々に何度も助けられました。皆さんに非常に素晴らしい演技をしていただきましたし、どのキャラクターも最高のキャラクターになったと思います。
そういう意味では、敵役の方々に何度も助けられました。皆さんに非常に素晴らしい演技をしていただきましたし、どのキャラクターも最高のキャラクターになったと思います。
最後に、第2クールを楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
私個人としては、作品はどんどんよくなっていると思っています。それは、音の部分はもちろん、私の担当分野ではない画の部分も含めて、客観的に見てもそう感じています。
原作ファンの方ならご存じだと思いますが、これからさらに魅力的なキャラクターが出てきて、どんどん面白くなっていきます。もう最高ですよ、と言うしかありません。あれも出ますし、あれも出ます(笑)。第2クールということは、原作を考えると、でかいババアも当然出ます。ぜひ楽しみにして、お待ちいただきたいです。
そして、皆さまの応援が、この先も作品を作る原動力になります。アニメだけでなく、遊技機やゲームなど、メディア全体を含めて『北斗の拳』を応援していただければ幸いです。Prime Videoなどでも何度も見ていただけると、それが我々の力になります。よろしくお願いします。
原作ファンの方ならご存じだと思いますが、これからさらに魅力的なキャラクターが出てきて、どんどん面白くなっていきます。もう最高ですよ、と言うしかありません。あれも出ますし、あれも出ます(笑)。第2クールということは、原作を考えると、でかいババアも当然出ます。ぜひ楽しみにして、お待ちいただきたいです。
そして、皆さまの応援が、この先も作品を作る原動力になります。アニメだけでなく、遊技機やゲームなど、メディア全体を含めて『北斗の拳』を応援していただければ幸いです。Prime Videoなどでも何度も見ていただけると、それが我々の力になります。よろしくお願いします。
キャスト解禁コメントでお聞きしている質問にもお答えいただけますか。
- 『北斗の拳』の中でお気に入りのセリフを教えてください。
悩みましたが、「退かぬ!! 媚びぬ 省みぬ!!」と、「愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!! 愛ゆえに人は悲しまねばならぬ!!」です。 - 好きなキャラクターを教えてください。
ですので、サウザーです。 - 『北斗の拳』との出会いを教えてください。
理髪店に置いてあったコミックスです。本当に5歳か6歳の頃だったと思います。確かアミバが出てくるところでした。トキが牢屋に入れられていて。コミックスの表紙として覚えているのは、ケンシロウの後ろにアミバが立っているビジュアルです。それが、私にとっての『北斗の拳』との出会いでした。 - 『北斗の拳』の舞台になっている世紀末の世を生き抜くために必要なことは何だと思いますか?
この立場としては、何かいいことを言ったほうがいいのかもしれませんが、圧倒的な暴力ですよ(笑) あとは愛です。愛があっての圧倒的な暴力。




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